「こういう家づくりの方法があるんですね。建築業界で仕事をしている私が知らなかったとは不覚です」。休日は山か海で過ごすことが多いIさんは、アウトドア仕様の家が夢でした。テラスや庭など、エクステリア関係の仕事をしているので、もちろん自分で施工しました。

Ｉさんは30代後半です。ブロック工事業を営んでいます。ブロック工事業とは、文字通りブロック塀を造ったり、レンガを積んだり、いわゆる建築の下請業者のひとつです。したがって、多くの建築会社と付き合いがありました。

家づくりを検討し始めたＩさんは、設備業者で働く友人に相談しました。「会社の経営のこともあるので、あまり家に金を使いたくないんだ。どこに依頼したらいいと思う？」

すると、思いがけない答えが。「それなら、オープンシステムがいいと思うよ。建て主が直に下請業者と契約するので、元請業者の経費が一切かからない。工事費全体の３割くらい浮く。これは大きいよ。Ｉさんが元請業者になったようなものだ」。

そして、こう付け加えた。「もちろん設計事務所の費用が発生するので、元請業者の経費分がそのままコストダウンになるわけではない。仮に設計事務所の費用が元請業者の経費と同じだとしても、設計事務所に設計・監理を依頼したら、本来、その費用が上乗せされるところが、タダでやってもらうようなものだから、悪くないと思うよ」。

こうしてＩさんは、プラスエム設計の分離発注方式で家をつくりました。ブロック工事はＩさんが、設備工事はＩさんにこのやり方を教えてくれた友人が行ったのは言うまでもありません。

設計事務所の費用を含めると、総工事費が目に見えて下がった訳ではありませんが、Iさんの思い描くアウトドア仕様の家を、設計事務所が計画・設計の段階から検討し尽くし、納得の家づくりができたところに価値があります。